バナー

Q168.息子に「親ガチャハズレ」と言われて、ショックです

ある日、高校生の息子が友だちと電話しているとき、「俺、親ガチャ、ハズレだから」という声が聞こえました。これまで息子のことで心配したことはあまりなく、反抗期もそれほどひどくなく、親子関係はうまくいっているほうだとずっと思っていました。「親ガチャハズレ」という息子の言葉は、青天の霹靂です。電話で漏れ聞こえてきたことなので、私たちのどこがハズレなのかを息子に確認することも、またその勇気もありません。我が家はたしかに裕福ではないし、私も夫も外見が良いわけでもなければ、人に自慢できるような仕事に就いているわけでもありません。子どもにしてみれば、それほど魅力的な親ではないと思います。でも、これまで精一杯息子に愛情をそそぎ、がんばってきたのに、「ハズレ」という言葉が胸につきささります。どうにも立ち直れません。どうしたらよいでしょうか。

A.「親ガチャハズレ」という息子さんの言葉には、息子さんの順調な成長発達をみることができます

「親ガチャ」という言葉は、今年の新語・流行語大賞にノミネートされるほど、社会に広がりました。「親ガチャ」とは、どんな親のもとに生まれてくるかで自分の人生が決まってしまう、という考え方を表している言葉です。この言葉が若者の間で流行する背景には、自分の「人生のうまくいかなさ」を親のせいにし、努力しようとしない若者の無気力化があるという解釈もあります。一方で、現代社会における「人生のうまくいかなさ」は、努力ではどうにもならない、個人の努力を超えたものであることの現れであるという解釈もあります(中森明夫「ニッポンへの発言」、毎日新聞20211020日夕刊)

親のことをガチャに例えるなんて、お母さんとしては大変驚かれたことでしょう!冒頭にも述べたように、親ガチャは流行語です。子どもは流行語が大好きです。そして流行語は必ず廃れます。そのような言葉に振り回されたり、一喜一憂せず、自分の子育てに自信をもってください。

「親ガチャハズレ」という息子さんの言葉には、息子さんの順調な成長発達をみることができます。

自分の中の理想と現実の間で揺れ動き、折り合いをつけようと努力しているのではないでしょうか

中高生期は親よりも友達を大切にする年代です。なぜなら自己を確立するために、友達や仲間の果たす役割はたいへん大きいからです。「親ガチャハズレ」という言葉を友達と共有し合うことで、連帯感が生まれます。友達同士の会話のノリで、「親ガチャハズレ」という言葉を使ったのかもしれません。

さらに、この時期は、理想我に目覚め、自尊心が強くなります。自分をより高めたい、理想に向かって生きていきたいという思いが強くなります。しかし、現実の自分、現実の社会も見えてきます。そんなことはできそうもない現実が見えてくるのです。こうして理想と現実の間でいつも揺れ動き、イライラしています。そのため子どもは、親や先生、周りの大人たちの権威や力に対して、反抗してくるのです。息子さんには際立った反抗期はなかったとのことでしたが、いまがその時期なのではないでしょうか。親や社会への不満が湧いてくるのはこの時期の重要な成長なのです。そして、理想と現実のギャップの折り合いを、自分なりにつけていこうと努力もしているのです。「親ガチャハズレ」という言葉は、自分なりの折り合いの付け方なのでしょう。繰り返しますが、息子さんの順調な成長発達のあらわれなのです。

表面的な言葉にとらわれることなく、広い観方で子どもの成長を見守ってあげてください

「親ガチャハズレ」といわれて、親はこれまでの子育てを全否定された気持ちになってしまいますが、親子関係にはいろんなことがあります。いいときもあれば、うまくいかないときもあります。これからの息子さんとの触れ合いで大事にしていただきたいのは、子どもの言葉の奥にある、心の声を聴き抜くことです。ご自分が高校生の頃とは時代が大きく変化しています。表面的な言葉にとらわれることなく、広い観方で子どもの成長を見守ってあげてください。徹底した人格尊重をしてあげましょう。どのようなときであろうと、その一瞬一瞬に、一生懸命向き合ってきたのです。大丈夫、あなたはそのままで、いまの関係を大事にしていってください。

トップに
戻る