23.人に気をつかい過ぎる息子が気になります
Q.6年生の長男は周囲に気をつかいます。3歳年下の弟に悪口を言われたり、友だちに約束を破られても怒りません。「嫌だと思ったら相手に伝えることも大切よ」と言っても黙っています。ときどき、「あいつは嫌なヤツ。人をバカにする」とこぼします。机の上が乱雑なことも気になりますが、息子なりに心のバランスをとっているのだと思い容認していました。しかし、先日、たまりかねて「この状態をどう思っているの」と注意すると、しぶしぶ片付け、「スッキリした。気分がいい」と言いましたが、数日後にはまた散乱。どう対応すればいいのでしょうか。
A.お母さんの忠告をきちんと受け止めて、机の上を片付けた息子さん。整理整頓をしなければいけないと分かっているのですね。「スッキリした。気分がいい」と言えたこのときが、息子さんの成長の”芽”を伸ばすチャンス。お母さんは「ほんとうに気分がいいね。いつもできるといいね。あなたなら、きっとできると思うよ」と息子さんをほめ、期待をかけてあげてください。それが「次も頑張ろう」という行動のエネルギーになります。
息子さんが周囲に気をつかったり、思ったことを言葉にしないことに関しては、お母さん自身が、息子さんとの接し方を振り返る必要があるかもしれません。せっかく話しかけてもお母さんが上の空で聞いていたり、意見を否定されたりすると、子どもは「言っても仕方ない」と話さなくなってしまいます。特に、小学6年生は「思春期」の入り口。自分からは話をしなくなるという変化の兆しが見え始めますが、それとは裏腹に、人に言えない思いを心にいっぱい抱えています。「触れ合い」というのは、その心の奥底に触れることです。それには、お母さんから、「今日は学校どうだった?」「お友だちと仲良く遊べた?」と話しかけてあげることが大切です。子どもが話したがらないときは、「お母さん、今日ね、こんなことがあったのよ」と自分の話をしてもいいのです。家庭のなかに会話しやすい雰囲気が生まれてくると、「お母さん、ぼくね…」と話すようになるかもしれません。
ご相談のなかに、「あいつは嫌なヤツ…」とこぼすとありましたが、こうしたときに、「学校でバカにされたの?」と尋ねるといいですね。実態が分かれば、正しく触れ合うことができます。もし、友だちにバカにされても、元気に学校に通っていたとしたら、「よく頑張っているね」と声をかけてあげることができます。そのお母さんの一言で、息子さんもつらい思いをした体験を大切にして、「頑張ろう」と思えるきっかけにすることができます。そうなるためにはまず、息子さんに「聞く」ことです。言って聞かせるお母さんより、子どもからまなぶお母さんであってほしいと思います。
もう一つ、気になった点があります。弟さんがお兄ちゃんの悪口を言っているということです。大人だって、悪口を言われれば腹が立ちます。まして、お兄ちゃんはまだ6年生。黙っていても、きっと腹を立てているはずです。こういうときは、「お兄ちゃんに、そんな言い方はないと思うよ」と親が弟をたしなめてください。また、話をしなくても、兄を会話の輪に入れて話題を振るなど、家のなかで兄の存在をないがしろにしないことが重要です。思春期の”入り口”に差しかかり、「自分は大人なんだ」という自覚が芽生え始めている頃ですから、叱るときも、「あなたなら、きっとできると思うわ」と、徹底して人格を尊重することが大切です。
そして最も大切なことは、感じたことを相手に伝えられる子どもになるように触れ合うことです。「約束を守ってもらえなくて寂しかった」「今日はキミと遊べてうれしかった」など、感じたことを相手に伝えるのは大切です。そのことで、相手もどんなときに人が傷ついたり、喜んだりするのかが分かり、共に成長できます。机の上を散らかすことで「バランス」を取るより、整理整頓がちゃんとでき、言うべきことがきちんと言えて、誰とでもコミュニケーションを図れた方がいいですよね。
「どうしたの? 何かあった?」と、何でも「?」で子どもの心に問いかけてみる、そんなお母さんの触れ合いが今、必要なのかもしれません。
Point.子どもの心に問いかける
お母さんが一方的に話すのではなく、少し時間はかかっても子どもの話を聞く気持ちを忘れずに。家庭のなかで話しやすい雰囲気をつくっていくことも大切です。